『きつねつきハイカラ四杯?』 そば屋の通し言葉って知ってますか?
飲食店につきものなのが「通し言葉」。
注文などを手早く店内から調理場へ伝える為に用いる、いわゆる“専門用語”のことです。
「そば屋」にも独特の通し言葉があるのですが、中には現代ではめっきり使われなくなってしまったものも…。
せっかくですので、当店「金生庵」でも使われてきた通し言葉から、いくつかご紹介いたしましょう。
お店ごとに微妙に違う言い回しがされるのでしょうから、こちらは“金生庵編”ということで!
■つく―
「天つき三杯かけ」というような使い方をしまして、こう通された注文の内容をきちんと読み上げますと「天ぷらそば一杯、かけそば二杯」となります。
ちょっとややこしいのですが、これは「つく」を一個と数えて“三杯の注文のうち、天ぷらそばは一杯だから、つまり、残り二杯はかけそばになるよ”・・・という計算をするわけですね。
私の祖母にあたる先々代の女将がよく使っていて、幼い頃はとにかく「?」と思ったものです(笑)
■御宿(おやど)
これは「出前」に対して使う、“店内での注文ですよ~”という言葉です。
先ほどの「つく―」と絡めて「御宿きつねつき四杯はいから」などと使います。
ちなみにこの内容は分かりましたか?「店内で、きつねそば一杯とはいから(たぬき)そば三杯」・・・が正解です!
■きれい
簡単にご説明しますと“少なめに盛ること”の意味です。
おかわりの注文が入った時などに「もりおかわり、きれいに」といった使い方をして、量を加減することを指したりします。
本来は“おかわり分も最後までおいしく食べていただこう”という、通しの際の気づかいから生まれた言葉と聞きますが、、、
当店ではむしろ「これ“きれい”すぎ!」などというように、「これでは盛りが少なすぎるよ!」と使う方が多いですね。
「ちょこんと盛ったそばなんて食べた気がしない!」と言う三代目の心意気と、何より「たくさん食べて欲しい」といった気持を込めて、金生庵では多めに盛ることがいつの間にか習わしとなっているのです(笑)
■玉(ぎょく)
これは「たまご」という意味で、あらかじめ生卵を落とした月見そばとは違い、たまご単品の注文が入った際に使います。
「もり玉つき」と調理場へ通せば、もりそばのつけ汁とは別に生卵を別の猪口に入れたものが出てきます!
また、「玉子丼」の注文は「ぎょくどん」なんて通すことも。字数にすればほんの少しですが、たしかに言いやすいんですよ~。
・・・と、今回はここまで!
他にもいろいろな通し言葉があるのですが、大別すると、分かりやすさと手短さをよしとした「江戸っ子」気質が大いに反映されたものと、お客さまへの心配りを気づかれないようにするための二種類になるでしょうか。
庶民に親しまれていた「そば」と、粋な心遣いを散りばめていた「そば屋」の様子が感じられる、面白い文化だと思いませんか?
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今回は当店通販サイト[生そば通販] 東京たぬきそば本舗 金生庵のコンテンツ知っていると少しだけ楽しい豆“そば”知識、【まめそば】から転載いたしました。
しかしこの【まめそば】なんですが、29回目を最後にネタ切れが続いておりまして…。
そろそろ記念すべき(?)第30回の執筆に入らなければ!と思う今日この頃です。